8月9日と10日、日本代表がSAGAアリーナで対戦するモンゴル代表。FIBAランキングは108位で、22位の日本とは86の差があります。数字だけ見れば力の差は明らかです。 ただ、この相手を「格下」の一言で片づけると見どころを取りこぼします。モンゴルは3×3(3人制)ではアジアの頂点に立ったことがある国で、直近2回の日本戦もどちらも接戦でした。分かる範囲でまとめます。 (2026年8月9日 追記) 第1戦が終わり、モンゴルの登録メンバーが確定しました。注目として挙げたアルタンゲレル・アズバヤル選手は登録されていません。予想と食い違った点は記事後半の追記にまとめています。
5人制の実績: 本大会にはまだ届いていない
モンゴルがFIBAに加盟したのは2000年で、国際大会の歴史はまだ浅い国です。5人制の主要大会の出場歴はこうなっています。
- ワールドカップ: 本大会出場なし
- オリンピック: 出場なし
- FIBAアジアカップ: 本大会出場なし(予選敗退または不参加)
アジアカップの本大会に一度も出られていない、というのが5人制での現在地です。日本が2025年のアジアカップ予選を5勝1敗で突破したのに対し、モンゴルはその予選で日本と同じグループに入り、突破はなりませんでした。
3×3では話が変わる
一方で、3×3のモンゴルはアジアの強豪です。FIBA 3×3アジアカップで2度優勝(2017年・2023年)、準優勝2回(2018年・2019年)、3位1回(2024年)という実績を持っています。 2026年の3×3アジアカップでもモンゴル男子は第1シードとして登場し、FIBAは「2度の優勝、2度の準優勝、銅メダル1つという実績に裏打ちされている」と紹介しました。3×3ワールドカップにも2018年から6回出場しており、最高順位は2018年の8位です。 3×3と5人制は別競技に近いので単純比較はできませんが、「1対1の強さ」「体の当たり合い」「短い時間で決め切る力」は共通します。FIBAは2026年のモンゴル男子について「フィジカルで、まとまりがあり、3×3が求めるものに合わせて作られたチーム」と評しています。この特性が5人制でどう出るかは、今回の2試合の見どころのひとつです。
過去2回の対戦は、どちらも接戦だった
日本とモンゴルは2024年から2025年にかけてのFIBAアジアカップ2025予選で同組になり、2度対戦しています。
| 日付 | スコア | 備考 |
|---|---|---|
| 2024年11月21日 | 日本 93-75 モンゴル | ホーム |
| 2025年2月23日 | 日本 89-79 モンゴル | アウェー・予選最終戦 |
2025年2月の一戦は、クォータースコアが23-22、23-22、21-18、22-17。第3クォーター途中には51-51と追いつかれ、終盤はリードチェンジを繰り返す展開になりました。最後は残り4分付近から日本がモンゴルを無得点に抑えて振り切っています。 この試合ではアレックス・カーク選手が24得点17リバウンドのダブルダブル、テーブス海選手が23得点8アシスト。そしてハーパー ジャン・ローレンス ジュニア選手が代表デビューを果たした試合でもありました。カーク選手とハーパージュニア選手は、今回の佐賀のロスターにも入っています。
注目は福島に加入する21歳
モンゴルの選手で日本のファンが最も名前を目にすることになりそうなのが、アルタンゲレル・アズバヤル選手です。 2005年3月28日生まれの21歳、204cm・85kgのSF/PF。福島ファイヤーボンズが6月30日に2026-27シーズンからの契約を発表しました。アジア特別枠での加入で、契約は2027-28シーズンまでの2年(2年目は双方オプション)、背番号は77です。 モンゴル国内リーグでの受賞歴が並外れています。
- 2023-24 モンゴルリーグ新人王
- 2024-25 モンゴルリーグ レギュラーシーズンMVP、最優秀守備選手
- 2025-26 モンゴルリーグ優勝、プレーオフファイナルMVP
新人王からMVPと最優秀守備選手を経て、優勝とファイナルMVPまで3年で駆け上がった形です。攻守どちらでも評価されている点が特徴で、本人は加入にあたり「福島ファイヤーボンズに加入することができ、大変嬉しく思います。監督、選手、スタッフの皆さんと良い関係を築きながら、チームの成功に貢献できるよう全力を尽くします」とコメントしています。 そしてアズバヤル選手は、8月7日に公表された来日メンバー18人に入っています(次の項)。
来日メンバー18人が公表された(8月7日)
モンゴルバスケットボール協会(MBA)の公式Xが、8月7日に日本遠征の拡大ロスター18人を公表しました。投稿には「アジアカップ2029の予備予選に向けた日本での親善試合」と書かれており、今回の佐賀2連戦がそれにあたります。国際試合で1試合にエントリーできるのは最大12人なので、この18人から各試合の12人が絞られます。
| # | 選手名(MBA公式のラテン表記) | P | 身長 | 参考 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | Ikhbayar Chuluunbaatar | — | — | — |
| 2 | Bolor-Erdene Gantsolmon | G | 183cm | 2003年生 / Miners |
| 3 | Enkhbayasgalan Amarbayasgalan | G | 195cm | 1997年生 / Metal |
| 4 | Uuganbayar Tumenbayar | PG | 180cm | 1998年生 / Metal |
| 5 | Saruul-Erdene Enkhbaatar | — | — | 1999年生 / Xac Broncos |
| 6 | Bayasgalan Delgerchuluun | — | — | — |
| 7 | Barsbold Baatar-Erdene | — | — | 2004年生 / Xac Broncos |
| 8 | Erdenetsogt Ochirbat | G | 184cm | 1995年生 / Knights |
| 9 | Temuulen Chinges | — | — | 2004年生 / Xac Broncos |
| 10 | Orgil Khishigbaatar | — | — | — |
| 11 | Azbayar Altangerel | SF/PF | 204cm | 2005年生 / 福島ファイヤーボンズ(2026-27〜) |
| 15 | Baljinnyam Ganzorig | — | — | — |
| 22 | Sugar-Ochir Erdenetsetseg | — | — | — |
| 25 | Binderiya Sandagdorj | — | — | — |
| 34 | Dulguun Gankhuyag | C | 204cm | 2003年生 |
| 44 | Gan-Erdene Solongo | — | — | — |
| 55 | Enkhiin-Od Sharavjamts | PG/SG | 203cm | 2002年8月27日生 / サウスカロライナ大 |
| 71 | Odbayar Ganzorig | — | — | — |
身長・生年・所属は、アズバヤル選手が福島ファイヤーボンズ公式、シャラブジャムツ選手がFIBA公式、それ以外はasia-basketの2026年ロスターによります。「—」は確認できた資料に記載がないものです。
名前の順番が資料によって入れ替わる
モンゴルの人名は父称(父親の名)+本人の名の順で書くのが国内の慣習で、FIBAやMBAの英語表記は逆に本人の名+父称の順になります。上の表の「Azbayar Altangerel」は、福島ファイヤーボンズの日本語リリースでは「アルタンゲレル・アズバヤル」と父称が先に来ています。同じ人物でも資料によって前後が入れ替わるので、中継や記事を見比べるときは注意してください。
#11 アズバヤル・アルタンゲレル — 福島加入の21歳は18人に入った
前の項で触れた福島ファイヤーボンズ加入の選手は、この18人に入っています。モンゴル国内リーグで新人王→MVP・最優秀守備選手→優勝・ファイナルMVPと3年で駆け上がった204cmで、日本のファンにとっては来季から毎週見ることになる相手です。この2試合が、Bリーグ入り前の姿を見られる機会になります。
#55 エンフィンオド・シャラブジャムツ — モンゴル人初のNCAAディビジョン1奨学生
18人の中で最も経歴が異色なのがこの選手です。通称マイク・シャラブジャムツ。2002年8月27日生まれで、FIBA登録は203cm(英語版Wikipediaは206cm)。モンゴル国籍として初めてNCAAディビジョン1の奨学生になった選手で、デイトン大→サンフランシスコ大→ユタ大→サウスカロライナ大と渡り歩いています。父はハーレム・グローブトロッターズに加入した初のアジア人選手で「モンゴリアン・シャーク」と呼ばれたシャラブジャムツ・ツェレンジャンハル氏。2019年の3×3 U18ワールドカップではモンゴルのキャプテンを務めました。
ゴール下と、ベテランの司令塔
高さの中心は#34 ドゥルグーン・ガンフヤグ選手(204cm・C)。204cmのアズバヤル選手、203cmのシャラブジャムツ選手と並ぶ、確認できた範囲では最も背の高いグループです。ガードには#3 エンフバヤスガラン・アマルバヤスガラン選手(195cm・1997年生)と#8 エルデネツォグト・オチルバト選手(184cm・1995年生)という30歳前後の2人がいて、2004〜2005年生まれの若手が多いこのチームの中では経験値の面で軸になりそうです。 一方、FIBA登録でキャプテンを務めてきたビルグーン・バットトゥブシン選手(1989年生)は今回の18人に入っていません。世代交代を進めながらの来日、という見方ができます。
ヘッドコーチはギリシャ人
指揮を執るのはヴァシレイオス・フラグキアス氏。フィジカルセラピストのマスラス・コンスタンティノス氏もギリシャ出身で、欧州出身のスタッフを軸にした体制です。アシスタントコーチはタムジド・バトトゥブシン氏、アズバヤル・ツェレンダグワ氏、ガンフルグ・バトジャルガル氏の3人。
【追記】第1戦の実際の登録は15人、アズバヤル選手は入らなかった
8月9日にSAGAアリーナで行われた第1戦は、モンゴル代表が67-65で日本代表を下しました。クォータースコアは21-20、14-15、21-15、11-15です。試合の中身は【観戦記】日本代表65-67モンゴル、同点に追いつくも届かず 若いジャパンに残った収穫と課題にまとめました。ここでは、この記事で書いた予想と実際のロスターの食い違いを補います。 大会公式のボックススコアに登録されていたモンゴルは15人で、8月7日に公表された拡大ロスター18人のうち3人が第1戦には入っていませんでした。この記事で最も紙幅を割いた#11 アルタンゲレル・アズバヤル選手(福島ファイヤーボンズに2026-27シーズンから加入)は登録されておらず、佐賀の第1戦には出場していません。あわせて、#2 Bolor-Erdene Gantsolmon選手と、高さの中心として挙げた#34 ドゥルグーン・ガンフヤグ選手も登録がありませんでした。欠場の理由は公表されていません。第2戦(8月10日)の登録は、この追記の時点では確認できていません。 あわせて訂正します。本文で「国際試合で1試合にエントリーできるのは最大12人」と書きましたが、この強化試合の第1戦は15人が登録され、うち5人がDNP(出場なし)でした。12人に絞られる前提で書いた部分は誤りです。
第1戦に登録された15人(◎はスターター)
| # | S | 選手名(大会公式の表記) | 出場時間 | 得点 | リバウンド |
|---|---|---|---|---|---|
| 0 | チョローンバータル・イヒバヤル | DNP | — | — | |
| 3 | アマルバイサガラン・エンフバイサガラン | DNP | — | — | |
| 4 | トゥムルバヤル・ウーガンバヤル | 14:40 | 0 | 3 | |
| 5 | エンフバータル・サロールエルデン | 13:15 | 0 | 1 | |
| 6 | デルゲルチョローン・バイサガラン | 13:59 | 2 | 0 | |
| 7 | ◎ | バトエルデン・バルスボルド | 22:38 | 2 | 4 |
| 8 | ◎ | オチルバト・エルデンソヒト | 19:25 | 5 | 1 |
| 9 | チンギス・テムレン | DNP | — | — | |
| 10 | ◎ | ヒシグバータル・オーギル | 25:14 | 16 | 9 |
| 15 | ガンゾリグ・バルジンニャム | DNP | — | — | |
| 22 | エルデンツェツェグ・スガルオチル | 13:16 | 0 | 1 | |
| 25 | ◎ | サンダグドルジ・ビンドリヤ | 18:52 | 3 | 0 |
| 44 | ソロンゴ・ガンエルデン | 21:10 | 6 | 5 | |
| 55 | ◎ | シャラブジャムツ・エンヒウード | 36:31 | 33 | 14 |
| 71 | ガンゾリグ・オドバヤル | 01:00 | 0 | 0 |
大会公式のボックススコアより。DNPは出場なし。
チームを動かしたのは#55 シャラブジャムツ・エンヒウード選手だった
本文で「18人の中で最も経歴が異色」と紹介したモンゴル人初のNCAAディビジョン1奨学生が、そのまま試合の中心でした。36分31秒コートに立ち、33得点14リバウンド7アシスト。内訳は3ポイント4/7、2ポイント9/18、フリースロー3/4です。チームの67得点の半分近くを1人で挙げた計算になります。 次いで#10 ヒシグバータル・オーギル選手が16得点9リバウンド、#44 ソロンゴ・ガンエルデン選手が6得点5リバウンド2ブロック。チーム全体では3ポイントが20本中6本(30.0%)で、日本の31本中4本(12.9%)を上回りました。リバウンドは40-39とほぼ互角です。
日本語表記は「父称が先」だった
本文で触れた名前の順番について、大会公式のボックススコアは父称を先に置く形で表記していました。本文で「エンフィンオド・シャラブジャムツ」と書いた選手は、公式表記では「シャラブジャムツ・エンヒウード」です。同じく「アズバヤル・アルタンゲレル」と書いた選手は、福島ファイヤーボンズのリリースと同じ「アルタンゲレル・アズバヤル」の並びになります。中継や他媒体と見比べるときの手がかりにしてください。 参考: 日本生命カップ2026(佐賀大会)大会サイト ボックススコア(第1戦)
この2試合の位置づけ
今回は強化試合で、予選の順位には影響しません。日本にとっては若手中心の13人を試す場であり、モンゴルにとっては格上との実戦の機会という位置づけになります。 ランキング差は86。ただ過去2戦がいずれも10点台の決着だったことを踏まえると、点差が開かない時間帯は十分にありそうです。3×3で培ったフィジカルとまとまりが5人制でどこまで通用するか、という目で見ると面白い2試合になると思います。 参考: バスケットボールキング「FIBAランキング最新版」 / Mongolia men’s national basketball team(Wikipedia) / Mongolia men’s national 3×3 team(Wikipedia) / FIBA「Mongolia arrive as the team to beat at FIBA 3×3 Asia Cup 2026」 / バスケットボールキング「日本代表が粘るモンゴルを振り切り」 / 福島ファイヤーボンズ「選手契約締結(アルタンゲレル・アズバヤル選手)のお知らせ」 / モンゴルバスケットボール協会 公式X(2026年8月7日) / asia-basket / FIBA(Enkhiin-Od Sharavjamts) 3×3と5人制の実力が大きく食い違う国は、モンゴルだけではありません。3×3は1チーム4人(コート上3人)で編成でき、コートも半面で済むため、選手層や施設の制約がある国でも世界と戦いやすい構造があります。モンゴルが3×3でアジアの上位に定着している一方、5人制のFIBAランキングが100位台にとどまっているのは、この違いが背景にあると考えられます。 なお、FIBAランキングは大会の結果によって変動します。モンゴルの108位は2026年7月13日時点のもので、前回から4つ順位を落としています。同じ時点で日本は22位、アジアではオーストラリア(世界7位)に次ぐ2番手です。
よくある疑問
モンゴル代表の世界ランキングは?
FIBA世界ランキングで108位です(2026年8月時点、日本は22位)。ただし3人制の3×3ではアジアカップ2度優勝の強豪で、5人制でも2026年8月の来日2連戦では日本に65-67で勝利しています。「108位」という数字だけでは測れないチームです。
モンゴルはバスケが盛んな国なの?
3×3では2017年と2023年にアジアカップを制しており、アジアの強豪と言えます。一方で5人制はFIBA加盟が2000年と遅く、アジアカップ本大会への出場歴がまだありません。
モンゴルの選手はBリーグにいる?
2026-27シーズンから、アルタンゲレル・アズバヤル選手が福島ファイヤーボンズにアジア特別枠で加入します。21歳の204cmで、モンゴル国内リーグのMVPと最優秀守備選手、優勝時のファイナルMVPを受賞している選手です。
大差になりそう?
過去2回の対戦はいずれも日本が勝っていますが、スコアは93-75と89-79で、どちらも二桁点差以内でした。2025年2月の試合は第3クォーターに同点に追いつかれています。 (2026年8月9日 追記) 第1戦は65-67で日本が敗れました。日本は3ポイントが31本中4本にとどまっています。
管理人より
ランキング108位と聞くと「消化試合か」と思いがちですが、調べてみたら3×3ではアジアで2回優勝している国でした。ここは正直、自分も知りませんでした。過去2戦のスコアを見ても10点台の決着なので、少なくとも前半は締まった展開になるんじゃないかと思っています。あと福島に来るアズバヤル選手、モンゴルリーグで新人王→MVP→ファイナルMVPと3年で駆け上がっているのが単純にすごい。代表に入っていたら佐賀で先に見られることになります。 あなたはどう見ますか? コメント欄であなたの声を聞かせてください。









